介護の人手不足はどれくらい深刻?データで見る現状と、施設に起きる問題・対策を大阪の介護採用支援の会社が解説

医療・介護採用
書いた人の欄・山下晋弥

書いた人:山下晋弥(株式会社SIMARAKO DYNA 代表・専門:介護の採用支援)

「求人を出しても、応募が1件も来ない」。

「夜勤に入れる人が足りず、また自分がシフトに入っている」。

「ニュースで『介護の人手不足は深刻』と言われるけど、うちだけがおかしいのか、どこも同じなのか、それすら分からん」。

介護施設を運営していると、こんな悩みを一人で抱えることになります。

この記事では、介護施設の経営者・採用担当の方に向けて、介護の人手不足が日本でどれくらい深刻なのかを、国のデータを使って順番に解説します。

数字を見ていくと、「国全体では深刻。でも、その深刻さは地域と施設によって大きく違う」ということが分かります。

この記事のまとめ(先に結論)

  • 介護職員は、2040年度までに約57万人を新たに確保しなければならない
  • 介護の仕事の有効求人倍率は3.97倍で、仕事全体(1.16倍)の3倍以上
  • 人手不足は、職員の負担・サービスの質・施設の経営・家族の介護にまで広がる
  • ただし、離職率が10%未満の事業所が約5割ある一方、30%以上の事業所も1割以上ある。深刻さは施設によって違う

    1. この記事のまとめ(先に結論)
  1. 介護の人手不足はどれくらい深刻?データで見る現状
    1. 1.介護職員の不足数と有効求人倍率
    2. 2.特に都市部で人手不足が深刻になっている
    3. 3.一時的ではなく、慢性的な課題になっている
  2. 2025年問題と、この先の見通し
    1. 1.2025年問題とは
    2. 2.高齢者と要介護者が増え、介護の需要が増え続ける
    3. 3.この先、介護職員はあと何人足りなくなるのか
  3. なぜ日本の介護はここまで人手不足なのか
    1. 1.高齢化と少子化で、需要が増えて担い手が減る
    2. 2.仕事内容に対して給与が低い
    3. 3.身体的・精神的な負担が大きい
    4. 4.人間関係による離職が多い
    5. 5.施設どうしの人材の取り合いで、採用が難しい
  4. 介護の人手不足が、施設と地域に引き起こす問題
    1. 1.職員1人あたりの負担が増え、さらに辞める人が出る
    2. 2.サービスの質が下がり、事故のリスクが高まる
    3. 3.入居(利用)を待つ人が増える
    4. 4.施設の経営が苦しくなり、倒産・閉鎖につながる
    5. 5.家族の介護の負担が増える
  5. 深刻さは、地域と施設によって違う
    1. 1.同じ介護の仕事でも、離職率は施設によって大きく違う
    2. 2.採用がうまくいっている施設の理由1位は「職場の人間関係がよい」
    3. 3.大阪府の特養で調べると、近くの施設も同じ強みを求人に書いている
  6. 国が進めている介護人材確保の対策5つ
    1. ①介護職員の処遇改善
    2. ②多様な人材の確保・育成
    3. ③離職防止・定着促進・生産性向上
    4. ④介護職の魅力向上
    5. ⑤外国人材の受入れ環境整備
  7. 介護施設ができる人手不足対策
    1. 1.近くの施設が言っていない強みを打ち出す
    2. 2.「待ち」から「探しに行く」採用へ変える
    3. 3.相談窓口と評価制度で、辞めにくい職場にする
    4. 4.記録のデジタル化や見守りで、現場の負担を減らす
    5. 5.外国人介護人材を受け入れる
  8. まとめ:人手不足の深刻さは「地域」と「施設」で変わる

介護の人手不足はどれくらい深刻?データで見る現状

まず、今どれくらい人が足りていないのかを、数字で確認します。

1.介護職員の不足数と有効求人倍率

厚生労働省の推計では、介護職員は2022年度の約215万人に対して、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人が必要になるとされています。

2040年度までに、約57万人を新たに確保しなければならないということです。

1年あたりにすると、毎年約3.2万人ずつ増やしていく計算になります。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」令和7年5月9日 p.5)

図2・介護職員の必要数

次に、仕事を探している人1人に対して求人がいくつあるかを表す「有効求人倍率」を見ます。

介護関係の仕事の有効求人倍率は、全国平均で3.97倍です。

仕事全体の平均は1.16倍なので、介護は求職者1人を3つ以上の求人で取り合っている状態です。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.8・令和7年3月の数字)

図3・有効求人倍率

2.特に都市部で人手不足が深刻になっている

介護の有効求人倍率は、地域によって大きく違います。

都道府県別に見ると、倍率が高い順に、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府となっています。

東京都は11番目です。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.8・令和7年3月)

都市部では、これから75歳以上の人口が急速に増えていくと見込まれています。

介護が必要な人が増える地域ほど、求人が増え、人の取り合いが激しくなります。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.8)

3.一時的ではなく、慢性的な課題になっている

介護の人手不足は、景気がよくなれば解決する一時的な問題ではありません。

国の資料でも、介護関係の仕事の有効求人倍率は「依然として高い水準にあり、全職業より高い水準で推移している」とされています。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.7)

さらに、介護サービス事業所に従業員の過不足を聞いた調査では、とくに訪問介護の人手不足感が強いことが分かっています。

(出典:介護労働安定センター「令和2年度 介護労働実態調査」/厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.19 に掲載)

求人を出しても来ないのは、あなたの施設だけの話ではありません。

ここまでは、業界全体の話です。


2025年問題と、この先の見通し

次に、この先どうなるのかを見ていきます。

1.2025年問題とは

「2025年問題」とは、人数の多い団塊の世代が75歳以上になり、医療や介護が必要な人が一気に増えることを指して、よく使われる言葉です。

国も、「団塊の世代が75歳以上となる2025年」を目途に、介護の仕組みづくりを進めてきました。

(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」)

2025年は、もう過ぎた年ではなく、介護の需要が大きく増える入り口です。

2.高齢者と要介護者が増え、介護の需要が増え続ける

国の資料では、2040年には85歳以上の人を中心に高齢化が進み、同時に、働く世代の人口が減ると見込まれています。

地域ごとに見ても、ほぼすべての地域で働く世代の人口が減ります。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.4)

85歳以上になると、介護が必要になる人の割合は大きく上がります。

85歳以上の人の57.7%が、要支援・要介護の認定を受けています(65歳以上全体では19.1%)。

(出典:厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第116回)資料3 p.14・2023年9月末時点)

介護が必要な人が増えるのに、働く人は減っていく。

これが、この先の見通しです。

3.この先、介護職員はあと何人足りなくなるのか

前の章で見たとおり、2040年度に必要な介護職員は約272万人です。

2022年度の約215万人から、約57万人も増やさなければなりません。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.5)

働く世代が減っていく中で、これだけの人数を介護の仕事に集めるのは、簡単なことではありません。


なぜ日本の介護はここまで人手不足なのか

ここからは、人手不足がここまで深刻になった理由を5つに分けて説明します。

1.高齢化と少子化で、需要が増えて担い手が減る

いちばん大きな理由は、介護が必要な人が増える一方で、働く世代の人口が減っていることです。

介護の人手は、介護が必要な人の数に合わせて必要になります。

利用する人が増えれば、それだけ職員も必要になります。

それなのに、職員になれる世代の人数そのものが減っていくので、どこかで必ず足りなくなります。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.4)

2.仕事内容に対して給与が低い

介護は、夜勤もあり、体も気も使う仕事です。

それなのに、ほかの仕事と比べて給料が高いとは言えません。

賞与を含めた月の給与で比べると、介護職員は30.3万円、仕事全体(役職者を除く)は38.6万円で、8.3万円の差があります。

(出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにした 社会保障審議会介護給付費分科会(第245回)参考資料 p.5)

介護の給料は、介護報酬という国の仕組みで大枠が決まります。

施設が自由に料金を上げられないので、人が足りなくても、給料だけを大きく上げることが難しいのです。

3.身体的・精神的な負担が大きい

入浴や移乗、排泄の介助は、毎日のように力を使います。

腰を痛めて、働き続けられなくなる人もいます。

さらに、記録や申し送り、家族への連絡など、介護そのもの以外の仕事も積み重なります。

夜勤で生活のリズムが崩れ、家庭と両立できずに辞める人もいます。

4.人間関係による離職が多い

介護の仕事を辞めた人に理由を聞くと、いちばん多いのは「職場の人間関係に問題があったため」です。

その割合は27.3%です。

(出典:介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」結果の概要 p.4)

介護はチームで動く仕事です。

忙しくて声をかけ合う余裕がなくなると、小さな行き違いが積み重なり、辞める理由に変わっていきます。

5.施設どうしの人材の取り合いで、採用が難しい

人手が足りていない介護事業所に理由を聞いた調査では、「採用が困難である」が86.6%で最も多くなっています。

(出典:介護労働安定センター「令和2年度 介護労働実態調査」/厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.19 に掲載)

採用が難しい理由として、「同業他社との人材獲得競争が激しい」を挙げる事業所も53.1%あります。

(出典:介護労働安定センター「令和2年度 介護労働実態調査」結果の概要 p.1)

求職者は、家から通える範囲で働く場所を探します。

ですから、あなたの施設が人を取り合っている相手は、全国の介護業界ではありません。

近くにある、いくつかの施設です。


介護の人手不足が、施設と地域に引き起こす問題

ここからは、人手不足が実際に何を引き起こすのかを見ていきます。

検索で「介護 人手不足 問題」「影響」と調べる方の多くが、いちばん知りたいところだと思います。

1.職員1人あたりの負担が増え、さらに辞める人が出る

人が1人辞めると、その人がしていた仕事は、残った職員に回ります。

夜勤の回数が増え、休みが取りにくくなり、残った職員も疲れていきます。

「もう限界です」と言って、また1人辞めていきます。

人が辞めると負担が増え、負担が増えるとまた人が辞める。

人手不足は、こうして自分で自分を大きくしていきます。

図4・人が辞める輪

2.サービスの質が下がり、事故のリスクが高まる

職員が足りないと、1人の利用者さんにかけられる時間が短くなります。

声をかける回数が減り、見守りの目が行き届かなくなります。

転倒や誤嚥などの事故は、職員の手が足りない時間帯に起きやすくなります。

いちばん守りたいはずの利用者さんの安全が、人手不足によって揺らぎます。

3.入居(利用)を待つ人が増える

職員が足りないと、空いている部屋やベッドがあっても、受け入れられる人数を減らさざるを得なくなります。

その結果、介護が必要なのに、施設に入れない人や、サービスを使えない人が増えていきます。

4.施設の経営が苦しくなり、倒産・閉鎖につながる

受け入れる人数を減らせば、そのぶん施設の収入も減ります。

人を集めるために、求人広告や紹介会社にかけるお金は増えていきます。

収入が減って、採用のお金が増える。

この状態が続くと、施設の経営は苦しくなり、最後は倒産や閉鎖につながります。

2025年の介護事業者の倒産は176件で、2年続けて過去最多を更新しました。

(出典:東京商工リサーチ 2026年1月9日発表)

5.家族の介護の負担が増える

施設に入れない、サービスを使えないとなれば、その分の介護は家族が担うことになります。

仕事を続けながら親の介護をする人が増え、介護のために仕事を辞める人も出てきます。

介護の人手不足は、施設の中だけの問題ではなく、地域で暮らす家族の生活にまで広がっていきます。


深刻さは、地域と施設によって違う

ここまで読むと、「やっぱり、どこも同じように大変なんやな」と思われたかもしれません。

ですが、データを施設ごとに見ていくと、違う姿が見えてきます。

1.同じ介護の仕事でも、離職率は施設によって大きく違う

介護職員の離職率を事業所ごとに見ると、離職率が10%未満の事業所が全体の50.7%ある一方で、30%以上の事業所も13.1%あります。

(出典:介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」/厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.11)

図5・離職率の施設差

同じ介護の仕事、同じ国の制度の中で、半分の施設では1年で辞める人が1割に満たない一方、およそ8つに1つの施設では、1年で3割以上の職員が辞めています。

人手不足の深刻さは、施設によってこれだけ違うのです。

2.採用がうまくいっている施設の理由1位は「職場の人間関係がよい」

事業所に「採用がうまくいっている理由」を聞いた調査では、1位は「職場の人間関係がよいこと」(62.7%)でした。

次いで「残業が少ない、有給休暇をとりやすい、シフトがきつくないこと」(57.3%)、「仕事と家庭(育児・介護)の両立の支援を充実させていること」(47.9%)と続きます。

(出典:介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」/厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.12)

採用できている施設は、給料の高さよりも、働きやすさで選ばれています。

3.大阪府の特養で調べると、近くの施設も同じ強みを求人に書いている

ただし、ここに落とし穴があります。

私たちが大阪府の特養で調べると、383件のうち172件が、求人の強みとして同じ「人間関係・チームの雰囲気」を書いていました。

(株式会社SIMARAKO DYNA 調べ)

図6・うちの調べ・人間関係

求職者がスマホで近くの施設の求人を並べて見ても、どこにも「人間関係がいい」と書いてあれば、違いが分かりません。

違いが分からないと、求職者は給料や休み、家からの距離といった「条件」で選ぶしかなくなります。

「うちは本当に人間関係がいいのに、なんで来てくれへんのやろう」。

そう感じている施設長の方は、少なくないはずです。

働きやすさで選ばれる施設と、条件だけで比べられてしまう施設。

人手不足の深刻さの差は、ここで生まれています。


国が進めている介護人材確保の対策5つ

国も、介護の人手不足に対して、次の5つの対策を進めています。

(出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」p.5)

①介護職員の処遇改善

介護職員の給料を上げるための加算などで、処遇の改善を進めています。

②多様な人材の確保・育成

介護の経験がない人や、中高年、子育てを終えた人など、これまで介護の仕事に入っていなかった人を呼び込む取り組みです。

③離職防止・定着促進・生産性向上

職員が辞めにくい職場づくりや、介護ロボット・ICTの導入による業務の効率化を支援しています。

④介護職の魅力向上

介護の仕事のやりがいや魅力を、広く知ってもらうための取り組みです。

⑤外国人材の受入れ環境整備

外国人の介護職員を受け入れやすくするための制度づくりです。

国の対策は、業界全体の底上げです。

ですが、底上げだけでは、近くの施設との違いは生まれません。


介護施設ができる人手不足対策

最後に、施設が自分でできる対策を5つ紹介します。

1.近くの施設が言っていない強みを打ち出す

近くの施設の求人を並べて読み、どこも書いていない、あなたの施設だけの強みを見つけて打ち出します。

「人間関係がいい」と書くなら、なぜいいのかを、具体的な出来事や数字で書きます。

求職者が「ここは違う」と気づける求人にすることが、条件だけで比べられないための第一歩です。

2.「待ち」から「探しに行く」採用へ変える

求人を出して応募を待つだけでなく、施設から求職者に会いに行く採用に変えます。

職員の紹介や、施設見学会、地域の人とのつながりなど、施設から声をかけられる場所を増やします。

3.相談窓口と評価制度で、辞めにくい職場にする

人間関係の悩みを話せる相談窓口を設けたり、頑張りが給料や役職に反映される評価の仕組みを整えたりします。

辞める理由の1位が人間関係である以上、ここに手を入れることは、採用と同じくらい大切です。

4.記録のデジタル化や見守りで、現場の負担を減らす

紙の記録や手書きの転記を減らし、見守りの機器を入れることで、介護そのもの以外の作業を減らします。

職員1人あたりの負担が減れば、辞める人も減ります。

5.外国人介護人材を受け入れる

特定技能などの制度を使い、外国人の介護職員を受け入れる施設も増えています。

受け入れる場合は、生活の支援や日本語の学習など、長く働いてもらうための体制づくりも一緒に考える必要があります。


まとめ:人手不足の深刻さは「地域」と「施設」で変わる

介護の人手不足は、日本全体で見ると深刻です。

2040年度までに約57万人の介護職員を新たに確保しなければならず、介護の有効求人倍率は仕事全体の3倍以上あります。

人手不足は、職員の負担、サービスの質、施設の経営、そして家族の介護にまで影響します。

ですが、施設ごとに見ると、離職率が10%未満の施設が約5割ある一方で、30%以上の施設も1割以上あります。

人手不足の深刻さは、地域と施設によって大きく違うのです。

大阪の株式会社SIMARAKO DYNAでは、近くの施設の採用ページを並べて読み、求職者から見て、その施設がどこで選ばれているのか、どこで外されているのかを確かめるお手伝いをしています。

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